五十肩

2022年07月15日 15:21

肩の痛みで来院される患者さまのなかで、 


肩が痛くて上がらないので五十肩ですか?


と尋ねられることがあります。中年以降の人が、肩が痛くて動かしにくくなった場合、以前から一般的に「五十肩」と呼ばれてきました。しかし、「五十肩」という言い方は医学専門用語ではありませんので、病院では「肩関節周囲炎」といったり、肩がガチガチになって動かない場合は「凍結肩」という病名を用いたりします。

ただし、似たような症状をきたす、原因の明らかな他の疾患がたくさんありますので、それらをすべて除外した上で「肩関節周囲炎」と判断することになります。おおまかに言えば「五十肩」とは、“特に原因がはっきりしない中年以降におこる肩の痛みと運動制限をきたす症候群”なのです。



四十肩、五十肩は、肩の関節にある「腱板」という組織が炎症を引き起こし「関節包」に広がる事で起こります。
肩関節は体の中で最も大きく動く関節で、前後左右に360度大きく動きます。
このため、肩では、骨どうしの接触は少なく、多くの筋肉や腱が支えています。この筋肉や腱に、長年の使用で、“ゆるみ”や“いたみ“がおこり、長時間の運動や、普段し慣れないちょっとした動きで筋肉や腱どうしがこすれたり、骨や関節と擦れ合ったりして、腫れ(炎症)をおこし、痛みをきたすのです。

一部でこれがおこると、痛みをさけようとして、肩の動きが不自然となり、他の筋肉や腱に無理がかかって他の部位に炎症が広がり、痛みで動かせない状態となります。炎症はいずれ治まりますが、動かさない筋肉や腱は弾力性を失い、固まって、最後には、他人が動かしても動かない状態となってしまいます。
 これは老化に伴い、筋肉や腱の柔軟性が失われスムーズに動かなくなるからと言われていますが、実際のところ原因ははっきりしていません。


   どのような症状がおこるか?
  初期の症状として、肩をある一定の方向に動かすと痛みを感じます。 最も多いのは、エプロンの紐を腰の後ろで結ぶ際や、髪の手入れをする 時の痛みですが、普段している仕事やスポーツの際の一定の動作によって 痛む場合もあります。病気が進行すると、痛みをおこす方向が増えてきて (たとえば、最初は手を後に回すときだけ痛かったのが、上に挙げる動き でも痛くなり)、日常動作が不自由になり、夜間に痛みきたす場合もあります。それとともに、動く範囲(可動域)も制限され、重症の人では、手を90度以上挙げれなくなることもあります。 

その他の例としては…
髪を後ろに束ねるとき
電車でつり革をつかむとき
洋服を着替えるとき
洗濯物を干すとき
エプロンの紐を結ぶとき
シャンプーをするとき
歯を磨くとき
…などなど
 


 痛みの状態について
 四十肩、五十肩は、痛みの強い「急性期」と、
痛みは落ち着いているが思うように肩が動かせない「慢性期」、
痛みが改善する「回復期」に分けられ、
ほとんどの場合、経過と共に痛みは改善していきます。


   
○急性期


 1)鈍痛 肩のあたりが重苦しい感じ 肩の関節がピリッと痛む

 2)感覚異常 肩周りの感覚が鈍くなってくる 腕に違和感がある 首や肩のあたりに張りを感じる
 ↓
 3)疼痛 ズキズキと、うずくような痛みがある
肩を動かす際に痛みを感じる
朝晩に痛みが強くなってくる

4)夜間時痛・安静時痛
動いても痛いし、何もしなくても痛い
夜寝る時に痛みがあり寝つけない、痛みで目が覚める

初期には肩の周りに炎症を起こしていので、無理に動かしてはいけません。

「五十肩は動かさないと固まってしまう」

という話がありますが、これはもっと後の話です。初期に痛みをこらえて動かしすぎると、どんどん炎症が悪化し治るのを遅らせます。この期間はできるだけ動かさないようにします。人によってはこの時期でも関節が固まって動きにくくなることもあり、予防が必要ですが、一日一回、入浴して肩を温めた状態で、良いほうの手で支えて、肩をいろいろな方向に動かしてやることで十分かと考えます。
 

○慢性期


・夜間時痛、安静時痛は軽くなる
・過度に動かしたときに、強いつっぱり感がある
・急性期の痛みにより、動かさない状態が続くことで関節が硬くなり、動かせる範囲が狭くなる

痛みは減少し、そのまま治ってしまう人もいますが、多くの人で、関節の動きが悪くなる(固まる)症状が残ります。この時期には、関節の動きをよくする為の体操が重要です。当院で電気療法や温熱療法、鍼灸施術などした後、訓練をすると有効です。いずれの場合も、体操後や翌日に痛みをきたさない程度に少しずつ行うことが重要です。 

○回復期


・徐々に痛みが改善し、動かせる範囲も広くなる
・動かしても痛みが出なくなる



  五十肩と間違えやすい病気
1)頚椎神経根症
 くびに原因がある病状で肩の周りの痛みをきたし、よく間違われます。くびや背中(肩甲骨部)の痛みや、肩こり、手のしびれがある場合が多いようです。

  2)腱板断裂 転倒時に手をついたり運動中や運動後に強い痛みと伴に、肩が挙がらなくなります。

  3)石灰沈着性関節周囲炎 軽い運動後に、急に肩の腫れと激痛をきたします。

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